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守屋行政書士事務所HP

2005年06月29日

本人の利益のため特に必要があるとは

 任意後見契約が登記されているときは、「本人の利益のため特に必要があると認めるときに限り」、後見(保佐・補助)開始等の審判をすることができると定めています(任意後見契約に関する法律第10条1項)。最初に法定後見(保佐・補助)が利用されているときは、「本人の利益のため特に必要があると認めるとき」は任意後見監督人は選任されず、任意後見契約は発効しません(同法第4条1項2号)。任意後見契約と法定後見の関係に関して問われる「本人の利益のため特に必要があると認めるとき」とはどのような事情なのでしょうか。

 一般的には、当初締結した任意後見契約で任意後見人に与えた代理権の範囲が必要な状況に対応できず、かといって、改めて契約し直すことも本人の事理弁識能力が悪化したことでできないために、同意権と取消権がある後見人を設置し本人保護をすることが考えられます。

 他には、任意後見人の報酬額が高額すぎる、任意後見人が任意後見契約第4条1項3号ロ「本人に対し訴訟をし、またはした者およびその配偶者並びに直系血族」に該当する場合、同号ハ「不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者」に該当するなど、任意後見契約を継続することが本人保護に欠ける場合を「本人の利益ために特に必要があると認めるとき」と論じた裁判事例があります(大阪高裁平成14年6月5日決定)。

 この裁判は、長男が両親に対して保佐開始申立てをし、その手続き中に次男が次男を任意後見受任者とする任意後見契約を両親と締結し、どちらが優先するのかと争われた事例です。一審では、長男と次男間で紛争状態であるために、中立公正な立場である第三者の弁護士を保佐人とする保佐開始審判をしました。これに対して次男が不服申し立てをしたという裁判です。

 大阪高裁の判断です。
@自己決定権の尊重から、任意後見を選択した場合には、法定後見を必要とする例外的事情がない限り、任意後見を優先する。
A任意後見契約が締結され、登記されていて、契約の無効原因もない場合に、保佐を開始するためには、「本人の利益のため特に必要がある」と認められることが必要である。
B保佐開始申立て後に任意後見契約が登記された場合でも保佐開始審判をするためには、「本人の利益のため特に必要である」ことを調査することが必要である。
C原審では、Bの審理・調査が尽くされていないので、保佐開始審判を取消し、差し戻す。

 法定後見人候補者と任意後見受任者が対立しているだけでは、「本人の利益〜」を論じる材料として不足し、任意後見契約の無効原因にはならないことになります。任意後見契約(公正証書)の作成過程の有効性も検討しなければならないようです。

 法定後見申立ての時に、登記事項証明書を提出する意味は、任意後見契約が締結されているかいないのかを調査する意味もあります。


posted by 守屋行政書士事務所 at 10:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 用語解説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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