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守屋行政書士事務所HP

2005年06月28日

責任無能力者の監督者の責任

 民法の不法行為の規定では、責任能力を欠く者は損害賠償責任を免じられ、その者に代わって、監督するものが責任を取ることになっています。713条では、「精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、賠償責任を負わない」と定め、714条で「無能力者に責任がない場合は、監督義務を怠らなかった場合を除き、監督すべき法定の義務ある者が無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任がある」としています。

 成年被後見人は事理弁識能力を欠く常況にある人ですので、責任無能力者に該当します。それでは、成年後見人は監督者であり、責任を負わなければならないのでしょうか。学説では、監督者に成年後見人が含まれています(加藤雅信『新民法体系5 事務管理、不当利得、不法行為』その他)。禁治産者時代でも同様です。

 2005年1月18日に横浜家庭裁判所で開催された成年後見制度運営協議会の報告書によれば、この疑問に対して、「成年後見人と民法714条の関係については、必ずしもこれまで検討されてきていないように思う。今後の検討課題とさせていただきたい」と記載されています。

 過去の裁判では、714条に関して、未成年者の犯罪に対して、両親の責任を追及した事例があります(最高裁昭和49年3月22日判決)。強盗殺人を犯した中学生には責任能力があり、その監督義務者である両親には、709条による不法行為が成立するとしています。

 また現在の最高裁判所に該当する大審院での昭和18年4月9日判決では、8歳の不法行為に対して、親権者が監督義務を怠らなかったことを立証しない限り、714条の監督義務者責任があるという記録があります。

 成人の禁治産者の犯罪等に対する監督義務者である後見人の責任に関する裁判事例を書籍や判例集で見つけられなかったので、別の論旨もあるかもしれませんが、監督義務者に成年後見人も含まれていることから、成年被後見人の犯罪や不法行為に対する責任追及が成年後見人にあるかもしれないことは理解できます。

 民法の規定では、後見人の職務に関して、成年被後見人の意思の尊重、身上配慮義務(858条)や事務取り扱いにおける善管注意義務(869条)が課されています。後見人としての仕事をする時にちゃんとやれよという規定です。これは後見人自身の職務ですから当然のことですが、他人の責任まで負わなければならないのでしょうか。これは困ったことです。

 成年後見制度導入の趣旨は、より積極的に被後見人の人権を尊重していこうというものです。後見制度に対して、専門家による事業サービスを導入し、適切な生活の質を提供する狙いがあります。これに対して、仕事をやってもらいたいですけど、サービスを受ける側の責任も肩代わりしなければならないとなると、誰が新規参入するというのでしょうか。後見人が家族であってもリスクが大き過ぎます。

 かといって、被害を受けた側は誰かに責任を取ってもらいたいことはこれまた当然のことです。泣き寝入りを黙認することはできません。しかし、成年後見人が被後見人を24時間に近い状態で監督することは、報酬請求額も莫大な金額になることが予測され、現実的な解決策ではありません。成年後見制度導入時の法務省の説明にもないですし、法案担当者は、先送りしたということでしょうか。家庭裁判所での申立て手続において、公的な成年後見保険制度への料金支払などが必要かもしれません。


posted by 守屋行政書士事務所 at 14:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 用語解説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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